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恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?
恋愛ゲームの世界から脱出する方法はイケメンからの告白!?
Author: 来須みかん

第1話 幼馴染はいませんけど?

last update Last Updated: 2025-02-12 09:45:30

ベッドの中で心地好い眠りについていた穂香(ほのか)は、聞きなれた電子音で目が覚めた。朝6時にセットしていたスマートフォンのアラームが鳴っている。

(学校に行きたくない……)

そんなことを思いながら、枕元に置いていたスマホを手探りで探す。

高校二年生になったばかりの穂香は、一年生のときに仲が良かった友達全員とクラスが離れてしまった。

別にイジメにあっているわけではない。だけど、仲がいい友達がクラスにいないことがつらい。

「はぁ……」

穂香のため息は、鳴り続ける電子音にかき消された。アラームを止めたいけど、スマホが見つからない。

「あれ?」

スマホを探すために、穂香はベッドから起き上がった。すると、部屋の隅にメガネをかけた見知らぬ男子高校生が佇んでいることに気がつく。

(あっ、これは夢だ)

普通なら悲鳴を上げるところだけど、男子高校生の髪と瞳が鮮やかな緑色だったので、穂香はすぐに夢だと気がついた。

穂香を見つめる男子高校生は顔がとても整っていて、まるでマンガやゲームのキャラクターのように見える。

「起きましたね。アラームは消しますよ」

そんなことを言いながら男子高校生は、穂香のスマホのアラームを慣れた手つきで止めた。

「穂香さん、おはようございます」

「え? どうして、私の名前を?」

と、言いつつ『そういえば、これは夢だった』と思い出す。

夢なら知らない人が穂香の名前を知っていても不思議ではない。

「えっと……どちらさまですか?」

おそるおそる尋ねると、男子高校生はニッコリ微笑んだ。

「嫌だなぁ、寝ぼけているんですか? 私はあなたの幼なじみのレンですよ。毎朝、穂香さんを起こしに来ているでしょう?」

「幼なじみ? レン?」

穂香には、レンという名前の知り合いはいなかった。そもそも幼なじみと呼べるような関係の人すらいない。

(なるほど、これはそういう設定の夢なのね。夢だったら、いないはずの幼なじみがいても問題ないか)

穂香は、初対面の幼なじみに遠慮がちに話しかけた。

「えっと……。とりあえず、あなたのことは、レンさんって呼んだらいいですか?」

「レンさんだなんて! いつも私のことはレンと呼んでいるじゃないですか」

「あっ、そうなんですね」

「穂香さん。いつものようにもっと気軽に話してください」

(そんなことを言われても……)

穂香はその『いつも』を知らない。

「でも、レンさん……じゃなくて、レンは、丁寧な話し方ですよね?」

「私はそういうキャラなので」

「キャラ?」

「ほら、メガネをかけて丁寧語で話すキャラって、マンガやゲームに出てきませんか?」

レンがかけているメガネを指で押し上げた。

(変な夢……)

穂香がため息をついたとき、部屋の外から「穂香ー! いつまで寝ているのー?」と母の声が聞こえる。

すぐにガチャリと部屋の扉が開いたけど、そこにはなぜか誰もいなかった。

「穂香ったら、起きていたのね。レン君、いつもうちの子がごめんなさいね」

誰もいないのに母の声だけが聞こえてくる。レンは、誰もいない空間に向かって「おばさん、お気になさらず」と微笑みかけた。

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